自動車保険の「使用目的」。みなさんは正しく申告できていますか?
マイカーを通勤のために使ったり、買い物や子どもの送迎など生活の一部として活用したり。車に乗る理由はさまざまかと思います。
自動車保険では、ドライバーごとの事故リスクを正確に図ることで公平な保険料を算出する目的から、“車の使用目的の違い”でも保険料に差を設けているのが特徴です。
今回は、使用目的別の保険料シミュレーションの他、使用目的変更時の差額や使用目的ごとの適用条件について解説します。
自動車保険の使用目的は主に3種類
自動車保険では、車の使用目的を以下の3種類に分けて申告するよう定められています。
- 日常・レジャー使用
- 通勤・通学使用
- 業務使用
一般的に日常生活の足として車を使用するケースが最も事故リスクが低いとされており、通勤・通学や業務使用のケースに比べて保険料が安く設定されています。
使用頻度の違い=事故率に差分が生じるため、使用目的によって保険料にも差が発生する仕組みです。
なお、保険会社によっては必ずしも上記の3種類に当てはまるわけではなく、「家庭用」または「業務用」いずれかを選択するといったケースもあります。
使用目的の主な適用条件
使用目的が3種類に分けられていることは理解できても、自分の乗り方がどの項目に当てはまるのか、いまいちピンと来ない方も多いのではないでしょうか?
保険会社によって独自の適用条件を設けているケースもありますが、ここでは一般的な使用目的の適用条件を解説していきます。
日常・レジャー使用の条件

「日常・レジャー使用」の条件は至ってシンプルです。「通勤・通学使用」または「業務使用」のいずれにも該当しない場合は、日常・レジャー使用の項目に当てはまります。
つまり、通勤・通学使用と業務使用の条件を理解していなければ、気付かないうちに告知義務違反となっている可能性さえ浮上します。
判断が難しい項目ですが、必ず契約前に使用目的の条件をそれぞれ確認しておきましょう。
通勤・通学使用の条件
年間を通じて、1ヶ月当たり平均15日以上、通勤・通学に車を使用する場合は「通勤・通学使用」に該当します。
例えば、悪天候の日だけは車で通勤するケースなど、通勤での使用が15日に満たない場合は使用目的を通勤にする必要はありません。
仮に「今月だけ15日以上、通勤に使ってしまった!」というようなケースでも、年間を通した平均が15日以内であれば問題ないのでご安心ください。
また通勤・通学に伴う「送迎」は含まないケースが一般的ですが、保険会社によっては最寄り駅までの送迎なども通勤・通学に当てはまるケースがあるため、注意が必要です。
業務使用の条件
業務使用とは通勤ではなく、勤務中にマイカーを使用するケースが当てはまります。
年間を通じて平均月15日以上、仕事の都合で車を使用するときは、使用目的を「業務使用」に設定する必要があります。
「通勤で使う自家用車を業務にも使用する」といったケースでは、通勤使用と業務使用、どちらにも該当することになりますが、この場合は「業務使用」として告知するよう求められるかと思います。「必ずしも毎回業務に使うわけではない」など、通勤使用と業務使用のバランスによっても判断が異なるため、念のため保険会社に確認をとると良いでしょう。
なお、ここでいう「業務」とは一般的に、“労働の対価を得るための行為”を指しています。
「正社員か?アルバイトか?」のように雇用形態などは問われませんが、ボランティア活動は業務にはあたらないケースが一般的です。
以上が使用目的の主な適用条件ですが、ここで注意しておきたいポイントが1つあります。
例えば「日常・レジャー使用」で告知したら、通勤・通学には一日たりとも使ってはいけない、ということはありません。
「日常・レジャー使用で告知していたのに、たまたま通勤に使っている最中に事故を起こしてしまった」といったケースも、条件さえ満たしていれば問題なく保険金を受け取ることができます。
「月あたりの平均15日」を目安に、自分の状況に当てはまる使用目的を設定すると良いでしょう。
使用目的別の保険料を比較
ここで、使用目的別の保険料の差額をシミュレーションしてみましょう。
今回は代理店型2社、ダイレクト型2社の見積もりを使用し、それぞれの保険料を算出しました。
【共通条件】
- 車名(型式):トヨタ ヤリス (MXPA10)
- 年齢:30歳
- 等級:12等級
- 免許証の色:ブルー
- 補償の範囲:記名被保険者のみに限定
- 車両保険:なし
- 走行距離:5,000km以下(※今回はネット型のみ申告あり)

※2023年3月時点 筆者見積もり
(※)ソニー損保の使用目的は「家庭用」「業務用」の2択のみ
各社の保険料を比較してみると、日常・レジャー使用>通勤・通学使用>業務使用の順に保険料が高くなっていることが分かります。
日常・レジャー使用との差額は、以下のようになっています。

使用目的の違いのみで、代理店型で約1,600~3,700円、ダイレクト型で約4,000~8,000円の差額が生じるという結果が出ました。
ダイレクト型の方が使用目的の違いによる保険料への影響が高そうですね。
今までなんとなく使用目的の設定をしていた方は、条件が適しているかを今一度確認して補償を見直すことで、保険料を抑えられるかもしれません。この機会にぜひ見直してみてくださいね。
こんなときはどうする?ケース別使用目的の選び方
とはいえ車の乗り方はさまざまなので、使用目的の設定に頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
ここではよくある2つのケースをピックアップしました。
Case1.週3~4回のパートの通勤に使用。日数は平均月15日以内か超えることも。
「フルタイム勤務の通勤に車を使用する」といったケースであれば問題なく通勤使用にできそうですが、週3~4回程度、扶養に収まる範囲で働く主婦・主夫の方が、通勤に車を使用するケースはどうでしょう。保育園に子どもを送った後、そのまま車でパートに向かうといった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この場合、1ヶ月あたりの平均日数が15日以内に収まる範囲なら日常・レジャー使用でもOKです。基本的に年間の平均で算出するため、昨年度の平均日数を計算してみると良いでしょう。
どうしても微妙なラインで悩ましいときは、保険会社に相談した方が確実です。
Case2.子どもの送迎のため週5日以上使用。この場合は通学にあたる?

子どもの幼稚園や保育園、場合によっては小・中・高と、学校までもしくは最寄り駅まで子どもを送迎する親御さんもいらっしゃるでしょう。
使用目的の「通学」にあたる条件には、2つのポイントがあります。
- 自分で運転して通学するのか?
- 学校教育法で定められた「学校」か?
前提として「自分で車を運転して通学する」という場合のみ、使用目的を「通学」とするのが一般的です。免許をとった大学生や専門学生などは、学校で“車通学”を認められている場合のみ、自家用車を使用して通学ができます。そうした場合に、使用目的を「通学」にする必要があります。
もちろん幼稚園や保育園の年齢では、子ども一人で車を運転することはできませんので、この場合の使用目的は「通学」には当てはまらないことがいえます。
ただし保険会社によっては、送迎=通学に該当するケースもあるため、契約前の確認が必要です。
また、“学校教育法で定められた学校”とは「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、大学、高等専門学校、盲学校、聾(ろう)学校、養護学校及び幼稚園(※)」を指しています。
(※)引用:文部科学省 第6条 (学校教育)法律に定める学校 より
例えば、送迎を通学の条件に含む保険会社の場合、幼稚園への送迎は「通学」に当てはまりますが、保育園は“学校”にはあたらないため「日常・レジャー使用」に該当するといったケースがあります。
嘘の使用目的を申告したらどうなる?
例えば、主な使用目的が通勤であるにもかかわらず、保険料の安い「日常・レジャー使用」と申告して契約した場合など。虚偽の申告をすると事故が発生した際、保険が使えなくなる可能性が生じます。さらに「告知義務違反」として契約解除となることも。
また故意ではなく、うっかり申告を間違ってしまった場合も同様の扱いになってしまうので注意が必要です。使用目的は明確にすることが大切だといえるでしょう。
契約途中で使用目的が変更したときは?
「今までは夫が通勤に使っていたが、子どもが生まれて妻がメインで使うことになった」
「子どもが進学して、通学のために車を使うようになった」
など、ライフスタイルの変化に伴い、車の使用目的が変わることもあるでしょう。そんなときは保険期間中であっても変更が可能です。
使用目的は任意保険において「通知義務」のある項目なので、車の乗り方が明確に変わったらすぐに変更手続きが必要です。反対に通知義務を怠ると、保険契約解除の対象となってしまうため注意しましょう。
迷ったら保険会社に相談が吉!

今回解説した適用条件は一般的によくあるパターンですが、実際には保険会社によって条件が異なるケースもあります。
「こんなときはどう申告するのが正しい?」と迷ったら、加入中の保険会社に聞いてみるのが解決への近道です。
専任担当者のいないダイレクト型自動車保険であっても、電話やオンラインのチャットなどで契約内容について相談ができます。もちろん契約前の質問もOKです。
意図せず告知義務違反とならないように、迷ったら保険会社に相談してみましょう。
まとめ:使用目的の条件を理解して、正しく申告しよう
自動車保険では、主に3種類の使用目的の中から、自分の車の使い方に合わせて正しく目的を申告する必要があります。
車の乗り方はライフスタイルの変化に伴い変化することもありますが、そうした場合にも必ず保険会社に変更を申し出ることが大切です。
使用目的を正しく申告するためには、適用条件の正しい理解がカギとなります。
“万が一”のために入る保険。いざ使おうとしたら告知義務に反していた、といったことがないように、定期的に補償の見直しを行いましょう。